北海道エコビレッジ推進プロジェクトについて
About HEPP

“持続可能な暮らし”とは何だろう?
共に生活し、共に学び、共に試そう!!

NPO法人北海道エコビレッジ推進プロジェクトについて

NPO法人北海道エコビレッジ推進プロジェクトは「持続可能な暮らしと社会」(=エコビレッジ)」を創造するための技術や考え方を学び広める団体です。

昨今の地球環境問題の高まりや、毎年のように発生する大規模災害をきっかけに、多くの人が今の私たちの暮らしが持続可能でないことに気づき始めました。
環境問題だけではありません。過疎化の進む地方の高齢者、孤独を極める都市住民、海外からの移住者増加に伴う異文化や格差の問題…人びとの不安も深刻です。今、私たちが享受している便利さが有限の資源の上に成り立っている以上、それがこのまま永遠に続かないのは明らかです。
さあ、問題は何となく理解できたような気がします。でも、自分はどうしたらいいか、社会はどこからどう変わっていくのかわからないという人は多いでしょう。この文章を読んでくださるあなたもその一人かもしれません。

私たちは「持続可能な暮らしと社会」というゴールに向かって、少しずつトランジション(移行)していこうという活動をしています。2014年「持続可能な暮らしや地域づくり」を抽象的な概念や座学の知識だけではなく、現場で学んだり体験できる場としてエコカレッジを設立しました。

「馴染んだ便利さを捨てるのは難しい」「グローバルな仕組みの中で自分ひとりの力は小さ過ぎるのでは」そんな迷いを抱えながらスタートするには、一緒に取り組む仲間、練習できる場所、様々なセクターが一緒になって行う実験、そして見本となるわかりやすいモデルが必要です。エコカレッジは「行動したい」と目覚めた人びとがアイデアや情報を共有しながら実践に結び付けていくことを目指しています。地域の資源を再発見したり、課題を解決しながら主体的に「気づく力」「考える力」「協働する力」を養う場、地域の生産現場が都市住民の学びになったり、都市住民の気づきが地域住民の喜びになったりすることで、互いに学び合い、支え合う関係を創ろうとしています。

カレッジのプログラムは、子ども向けの農村体験から大学・企業との人材研修まで多岐にわたっています。たとえば有機農業やエコ建築などの理科系科目では、農薬や化学肥料を使わずに野菜や果物を育てたり、太陽光パネルやコンポストトイレなど環境に負荷の少ない住まいの装置を学ぶことができます。環境面だけでなく、経済的にも人間的にもサスティナブルであるためには、お金や組織の問題も大切です。カレッジでは、ソーシャルビジネスやコミュニケーション、循環型経済の仕組みなど文化系科目も学びます。

なぜこのプロジェクトが必要か

私は、行政および市民活動の現場を通して、テーマやセクターごとに分断された世界での問題解決は限界だと感じてきました。地球レベルで起きている環境問題、地域レベルで抱えている経済問題、そして一見個人レベルと捉えられる引きこもる若者の問題も、根っこはつながっています。すなわち「無限の成長(消費)」への幻想と依存の心です。課題は、巨大な仕組みの中で様々なものが分断されていることにあり、解決のためには幻想から脱却して小さく自立すること、つまり「自分でできることは自分」でという精神と隣人同士が助け合う仕掛けを創ることにあると考えました。

私は13年勤務した市役所を退職し、2006年から2008年にかけて、イギリスを中心にヨーロッパのエコビレッジを訪問しました。そこでは、住民が協働して人間らしく、かつ環境負荷の少ない暮らしを実践していました。コミュニティは小さなところで10人、大きなところでは500人、1000人という規模で営まれ、子育てや障がい者の自立支援など社会福祉的な役割も果たしています。

縦割り的な行政組織や利潤追求がメインの企業組織とは異なり、エコビレッジでは住民が対話と合意形成を重ね、農業も経済も、環境も福祉も、暮らしに関することは全てつなげて考え行動していました。何より素晴らしいと思ったことは、コミュニティには特別な技術や資格がなくても、子どもでも高齢者でも身体にハンディがあっても誰にでも役割があり、感謝し、感謝されるチャンスがあることです。さらに、日常の労働や暮らしを外部の人たちとも共有し、その機会がまた多くの人びとの学びや気づきのチャンスにもなっていました。

私はエコビレッジの仕組みが日本の人間力、地域力をアップさせ、高齢化する農山村を活性するヒントになると考えました。人びとが自分たちの暮らしを自らの手で作る、それを仲間や地域で分かち合う社会、それが実現すればエネルギーや食料の問題、補助金に依存する地方の経済を解決する糸口にもなると信じています。

これまでの取り組み

自分もエコビレッジ的なコミュニティに住みたい、そんな場所を創りたいと思ってヨーロッパのエコビレッジ探訪から帰国しましたが、土地もお金もなく、仲間もいませんでした。「理想かもしれないけど非現実的」「宗教団体みたい」当時、周囲の目は冷ややかでした。
でも、行動しているところに人も情報も集まるだろうと思い、一人でもやろうと決めました。最初は、空知郡長沼町の古民家と2反の畑を教材に、通年週末型の塾(エコビレッジライフ体験塾)を始めました。

2011年の東北大震災と原発事故をきっかけに、持続可能な社会モデルを作る決意を新たにし、2012年余市町に拠点を移しました。以来、多くの方と一緒に構想を描き、今ではメンバー間の住まいとしてのエコビレッジではなく、幅広い人を巻き込んで地域全体でエコアップしていくことを目標に掲げています。2013年には目標を実現するための学び合いと実践拠点としてエコカレッジを立ち上げました。活動は大勢の会員やボランティアによって支えられています。地域農家、札幌の大学生や専門家、海外からのボランティア、東京のビジネスマンなど関わりは様々です。

「エコは人だ」実習で畑の除草をしたひとりの学生が言いました。
かつて、経済成長を支えるために働き手を都市部に集めた時代があります。その結果、農薬や機械に頼らざるを得ない環境負荷の高い農業が発達し、人のいない農村が生まれた…。その逆を歩むこと、つまり農村の人手が増えればエコロジカルな農業が再生する。さらにその機会を新しい気づきや学びのチャンスとして積極的に活用できれば、関わる人びとが癒されると同時に農村も活気づくのではないか。地域の力を学びに活かし、学びの力を地域に還元するのが「エコカレッジ」です。 まだまだ活動は緒に就いたばかり、財政的にも組織的にも未熟な市民団体ですが、手探りで前進を続け、昨年は10周年を迎えました。2022年はこれまでの歩みをベースに次の長期計画を描くこと、企業研修や教育旅行受け入れなどさらにターゲットを広げた学びの企画を進めようとしています。

危機をチャンスに

2020年は世界中の人びとの心に残る年になるでしょう。新型コロナウィルスの感染による影響で、私たちの暮らしは大きな混乱に巻き込まれました。

正直、私自身、自体を甘く見ており、エコビレッジがコロナ騒動でこんなに打撃を受けるとは予想もしていませんでした。世界的に人の動きがストップして、私たちの活動が都市の応援団やグローバルな仲間たちに支えられていたことを痛感しています。

私たちは、自らの在り方を学び直す機会を与えられたのでしょう。そもそも、克服すべき課題はコロナだけではありません。大量消費、大量廃棄の経済により、地球は悲鳴をあげているのです。人びとが無理やり暮らしを矯正させられているこの時こそ、これまでの社会の歪みを是正したり、 地域が団結して新しいことに挑戦するチャンスです。

グローバルな視点やネットワークを持ちつつ、足元の暮らしや地域の仲間を大切にするという視線を今一度持ち直そう。この先恐れられている食糧難に備える意味でも、自らの自立経済を目指す意味でも、今年はいつもより生産に力を入れようと、精進する所存です。

この困難をみんなで乗り越えて、サスティナブルな未来を創っていきましょう。

NPO法人北海道エコビレッジ推進プロジェクト理事長 坂本純科

会報のご案内

特定非営利活動法人 北海道エコビレッジ推進プロジェクト 団体概要

1.団体の目的

  1. 自給的な生活スキルや環境荷の少ないライフスタイルの実践研究を通じて、持続可能な暮らしと社会について学ぶ機会を広く提供する。
  2. 農業体験や協働作業を通して子どもや青少年、障がい者などさまざまな人が社会参加を図り、都市と農村が互いに支え合う関係を構築する。
  3. 北海道内にエコビレッジを建設するための情報収集や準備活動を行う。

*「エコビレッジ」は、住民が協働して環境に負荷を与えない暮らしを求めるコミュニティです。持続可能な暮らしの実践として、また過疎や子育てなどの地域課題の解決手法として着目され、欧米を中心に世界中で拡大し15000箇所以上あると言われています。

2.事務所および実習場

札幌事務所:市中央区宮ヶ丘2丁目1-1 ラファイエット宮ヶ丘303号
余市事務所:余市郡余市町登町1863

3.会 員

正会員 45人、賛助会員 45人、法人会員 2

4.沿 革

2009年2月 エコビレッジライフ体験塾設立
2012年1月 NPO法人北海道エコビレッジ推進プロジェクト設立
2012年3月 余市における活動開始
2014年4月 余市エコカレッジプレ開講、学び舎建設
2015年 余市エコカレッジ本格開講
2016年3月 シェアハウス建設
2017年 ハル農園リフォームに着手
    循環型教育ファームの整備

5.余市における主な活動(2021年度)

  • 学生ワークキャンプ(5月、8月)
  • グループ研修、視察受け入れなど
  • 大学や研究機関と連携した教育プログラム(北海道大学大学院、北星学園大学、酪農学園大学、ESDキャンパスアジアとの連携)
  • 農業体験や農村資源を活かしたプログラム(修学旅行生の受け入れ、いずみの学校農業研修)
  • イベント参加・観光業受け入れ(La feteワインツーリズム、NHK文化センター、宝島旅行社インバウンドツアー)

6.事業規模

16,629千円(2021年度)

7.助成実績(2021年)

北海道リスタート事業、北海道e-水プロジェクト(北海道環境財団)、はまなす財団 他

8.定款(2018年改訂)

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